杖の効用

毎日暑いです。

杖、ステッキ、

お年寄りの象徴にもなるものですが、

自分も一時お世話になったことがあります。


痛い、足が痛い、

もう杖にも頼ろと思って

使ってみたのですが、

これが歩くのも

階段のぼるのも楽なんです。


そして、杖をついているといいことがあります。


電車に乗ると、大抵席を譲ってもらえます。


ある時満員のバスに乗りました。

混んでいるバス特有の苛々が満ちていました。

私の斜め前に、

ザ.オジサンがふてくされた顔で

どっかり座っていました。


そのオジサンが立っている私と

目があった瞬間


そのオジサンの表情が一変して

「申し訳ありません。気付きませんでした。」

と席を譲ってくださいました。


そのオジサンがあんまりにも

丁寧だったものだから、


「まあ、ありがとうございます。

よろしいんですの?」

なんて、どこかの淑女よろしく言って

座らせてもらいました。


この時、バスの中の雰囲気が、

それまでの苛立って荒れた空気が、

優しく温かく心地良い空気に変わりました。


一本の杖がだれかの優しい心を呼び起こし

その優しい思いが場の雰囲気を変えたんです。


これぞ、杖の効用。f:id:yamatomanabi:20170715120909j:plain

 

それから、乗り物に乗る時には

なんとなく、席を譲ってもらえるのを

期待してしまう、さもしい自分がいました。


しかし、夕方の千代田駅に乗った時は

そんな甘さ吹き飛びましたね。


周りみんな、おばあさんばっかり、

杖ついてる人ばかり、

たまさか席が空いたが、

おばあさんと私で席の譲り合い


「どうぞ」「いや、どうぞ」「いやいやどうぞ」

これもなかなか微笑ましい。


フト見ると若いサラリーマンふうの

男の子が座って、爆睡してました。


この子の背中に何人の老人の生活が

のしかかっているのだろう


ほぼ倒れるように眠っている

若者の姿から、今の日本を感じた

夕方の千代田線。